職人魂 1

私の色出しは難しい色が多く、既製の色見本では間に合わない。

よって、絹糸の糸巻き、かつて自分用に染めたお生地の切れ端のほか、

微妙な色の岩絵の具から取ることが多く、

 

日本画に用いる岩絵の具は、高価ながら自然が材料なので意外に重宝。

稀に、洋服の切れ端から取ることもありますが、

女の人が美しく見える色は、ほぼ決まっているのです。

濁った色はアカンのです。

みなさまお任せなので、

美しく見える色の中から、着る人の「お顔が美しく見える色」を決めます。

特に、

染め変え...となると、血沸き肉躍り、ハリキッテお似合いの色を探し出します。

髪の色、背格好、年齢、雰囲気、お家の環境や趣味を考えつつ、想像力を働かせ、

最後はエイッ!と決断させて貰っています。

そして、

染め変えの仕上がりを お気に召していただいた時の喜び...といったらありません。

 

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さて、先週末のこと、

7月にお願いした「染め変え」がなかなか出来上がって来ず、

新しい依頼もあって、引き染めをお願いしている社長に連絡を入れると、

京都の暑さで、すっかり体調を崩されてしまった...とのこと。

 

「ここ5年ほど、京都の夏の暑さはかないまへんのですが、

今年は 体がおかしゅうなって、ほとんど出来しまへんのです。

このところ、少し楽になりましたよって、来週から、急いでやらして貰います...」

(心なしか、お声が弱々しい...)

 

「いやぁ、そうだったんですか。ご無理なさらないで下さいませね。 

こちらはなんとかなりますし、なんといっても お体第一ですよ。

社長のとこ、

仕事場にエアコンつけないで下さってるでしょ。今時、凄いことだと思いますけど...」

 

「ええ...つけてないんです!」

 

(仕事場の2階は若い人達の作業場であり、ここはエアコン完備なれど、ガンガンに

冷えたら消して作業されていらっしゃいます。 

社長の持ち場である1階には、ハナからエアコンを付ける気がないのです。

冬は、上下階ともスチームをつけて暖め、作業中はスチームを切るという、徹底した

昔のやり方を貫いておられ、何度、お伺いしても感心あるのみな仕事場なのです)

  

「エアコンつけちゃうと、綺麗に仕上がりませんものねぇ。

今はエアコンつけてはるとこ多いらしいですけど、

エアコンの風が吹くと、染めがまだらになってしまってダメでしょう?」

 

「そうなんです。つけてはるとこもあるいうてますけど、

ウチはつけないでいきたいんで...」

 

「ほな、来週からやのうて、もっと涼しくなってからお願いしますね。 

お客様には、ちゃんと事情をお伝えしておきますよって、

まずは、社長の健康第一ということで!」 (私、時々、ヘンな関西弁になります)

 

「おおきに...。それでは、荷物が着きましたら、ご連絡させて貰います...」 

 

DSCN0653.JPG


さてさて、私もいいオバサンですけど、社長は私よりずっと年上のご様子。

私のところの染めは、まだまだ社長でなくては困るんです。

(写真は、染め変えが仕上がったばかりの反物)

 

ということは、残酷にも「エアコンなし」でないと困るの。

 

若い息子さんや他の職人さんには、まだまだ任せられないのです。

片手にバケツを持ち、一反を端から端まで「刷毛」で染めていく技術は、

染め直しなど古いお生地の場合、技術の他に、経験とカン、創意工夫がいるのです。

 

新しいお生地の場合は、色見本に近づける...という経験とカン、技能がいるのです。

 

私の中で人間国宝の社長は、もう、夏の間は休養されると決めてよいと思うの。

ふぐと同じにしたら怒られるかもしれませんけど、夏期は休業され、

夏以外の時季に、夏の分も、うーんと頑張っていただきます。

 

お2階の若者グループには、夏も頑張っていただきます。

 

さて、

刺繍、金箔、染み抜きなどのお手入れ、お仕立てをお願いしている素敵な職人さん達は、

揃って中高年なんです。

 

「いつまでできるかなぁ...」と、女の人がほとんど着物を着ない世の中で、

本物の職人は、日本人の魂を忘れず、身を削り、清らかに生きています。

 

不肖、私も、そんな職人でありたい...。

 

 

(終)

 

 

 

 

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