江戸表具・春原敏雄さんの仕事

以前、自宅と仕事場の襖制作をお願いした春原敏雄さん。

東京都 伝統工芸士(受賞多数)のお一人であり、

本日は、

特別に、壁の腰貼りの様子を撮影させていただきました。

(江戸表具の粋な技、風情をご紹介...)


二種類の糊、手漉き和紙の裁断は、

予め、ご自身の仕事場にて調製の上、ご持参下さいました。



IMG_8700.JPG


きっちりと江戸間サイズの6畳間は、

大振りの箪笥と座卓、整理のつかぬダンボールで狭いまま。

座卓を片付けようとすると、

「こちらで大丈夫ですよ...」 とのこと。

(狭いこと狭いこと、誠に申し訳ありません...)



IMG_8703.JPG


IMG_8723.JPG


長さのある場所から右方向に手漉き和紙が貼られていきます。

そのテキパキとした手つき、刷毛の運び、身体の向き、何もかもが素晴らしい。

(これぞ、熟練!!)


携帯が鳴るので、

「あ、お電話ですよ。どうぞお出になって下さいませね...」

「え、よろしいのですか...」

「もちろんです!」



IMG_8724.JPG


メールらしく、用件のみ。 すぐに作業にかかられると、刷毛の運びのお早いこと!

(狭いので、どんなにかやりにくい事でしょう...)



IMG_8726.JPG


四隅の糊と、真ん中の部分の糊は濃度が異なり、

刷毛も異なるのですが、捌くスピードには目を見張ってしまいます。



IMG_8736.JPG


「すみませーん!

もし、一瞬でも止まれるのでしたら、刷毛が止まったところを写してもよいですか...?」

「はーい」

「ありがとうございます!」



IMG_8741.JPG


↓ 下は貴重なお道具。


IMG_8742.JPG


ありゃ、これは、何にお使いになられるのでしょう...。



IMG_8751.JPG


お三味線立てがあった場所の腰貼り。

鬼門の場所です。 (ご気分、大丈夫でしょうか?)


IMG_8745.JPG


最後は、

お三味線入れ(2丁収納できる)が置かれていた場所の腰貼り。

お三味線入れは、10年前から掃除機の保管庫に。


IMG_8754.JPG



壁は、砂壁風の白だったのに、なんと、天井と同じものが張られてしまい、

内心、プンスカしていたのですが、

もの凄く安っぽい壁も、春原さんの腰貼りのお陰で、色っぽく変身しました!

前回は生成りでしたが、

赤みのある厚口和紙を選んだこと、正解でした!


(ご常連の皆様には、ぜひ、お出まし戴き、腰貼りの効果をご覧戴きたい...)


箪笥の裏側以外の腰貼り → 63センチ高さ、

(今回の費用は、お見積もり・施工、手漉き和紙、¥47,520税込)


空間の多い和室、

お茶室などに、腰貼りは欠かせませんが、

手漉き和紙の見本帳は美しいだけでなく、

眺めるだに、日本の手仕事の味わいがビリビリ...と伝わってくるのです。

ビリビリビリビリした後は、とっても癒やされますの。


日本の文化には、深い魅力に満ちた力がありますね。

こうして書き進める内に、

春原さんの、あの見本帳が思い出され、

「きものの色見本にもよいなぁ...」 と、バカですねぇ、欲しくなっています。 



さて、

「よくなりましたよ!」 と、

↓ お仕事のご確認。

「ほんと!」 と、嬉しいオバサン。 幸せなひとときです。



IMG_8756.JPG


こちらの襖は、春原さんの以前の制作です。

この図柄(唐紙は東京松屋)が好きで、この意匠で紬地のきものを2枚制作しました。

(自然光の入り方次第で、松の意匠が刻一刻...と変化します← ここが魅力...) 



IMG_8770.JPG



お茶の時間は、

職人同士の会話を楽しませていただき、晴れ晴れとした気分を戴きました。

次代への「中継ぎ役...」 とおっしゃる春原さんですが、

私も、きもの製作においては、同じ事を思っております。

真摯に求める人には、知りうる限りのことをお授けしたいと思っております。


手漉き和紙の和照明の仄暗さを共有し、

「これがいいんですよ...この暗さがね...」

「そうですよね、隠微さがあるけれど、日本の灯りですよね」



IMG_8918.JPG



ところで、

水漏れ事故の始末はまだ終わっていませんが、

素晴らしき方々とのお出会いのお陰で、

「世の中、捨てたものではない!」と、

ありがたい気持に、幾度なれたことでしょう...。


漏電の時に登場された、素直でまっすぐな東電の職人さん、

漏電を修復して下さった、熟練・電気工事の職人さん、

漏水に濡れたカーペット下の畳の交換に見えた、カッコよすぎる畳職人さん、

冷静沈着な保険屋さん、

美意識の塊の江戸表具・職人さん、

途中から登場された管理会社の所長さん、


みんなみんな、自分の仕事に邁進され、社会常識を分かち合っているのです。


だから、

短時間で、仕事に必要なコミュニケイションが取れるのです。



漏水の後始末が長引き、

付随する不手際に 、我慢のストレスも相当ですが、

人の心根の良さに、私の心は助けられています...。



そして、

どんなに忙しい時も、

漏電でてんてこ舞いの時も、

決して忘れなかった「喫茶去」の心。


この気持、

この気持が実践できる間は、心にゆとりがあります。

ゆとりさえあれば、いかなる場合も、収まるところに収まると思うの。


誰かが訪れて下さったのなら、まずは一服のお茶を淹れ、

出来れば、お相伴し、少し語らい、ユーモアを忘れぬ心で接すること。

時分時であれば、共に食し、

お別れの時は、お出会いの時より丁寧に...。

これが、母から学んだウチの喫茶去。



でも、

妥協せざるを得ない場合は、ひとときの諦観がお勧め。

(たとえ、主張が正しくあっても、我を張っては始まりません!)


そして、

ごく自然に気分が楽になれば、良きことの予兆。

良き時期の到来です。

(疲れにくくなったら、しめたもの!)



良きことも悪しきことも、決して、長続きはしません。


四季のある日本では、こういうことが規則正しく循環しているのですね。



今年は、お雛様らしきしつらえをしなかった、初めての年、

とうとう ちらし寿司さえ、見ていませんの。

雛あられもね。


こんな年もあるのねぇ...と、今は自然に身をまかせていますが、


弱体化真っ最中につき、周囲の方々に支えられているのです。



そのうち、調子が出てきたら、

今度は私がお支えする番ですね! 



その時が来たらね、初老のオネーサンに任せて!



あらあら、またまた、脱線の巻。




(終)





最新コラム

このページのTOPへ