染繍/図案の巨匠(京都)


お打ち合わせがあり、

二条城に程近い、図案の巨匠の仕事場にお邪魔致しました。

私の作品は、ほぼ、こちらの巨匠の手によるものです。



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夏の訪問着の図案が完成したお二階の仕事場は、

創作の場ならではの、独特の気が溢れています...。

資料、図録に囲まれた20畳以上のお部屋で、

静かなる巨匠は、作品と対峙されます。


一時、大きなご病気をされ、見事に復帰なさいましたが、

巨匠の損失は、日本のきもの文化の損失にかかわることゆえ、

青年期の画学生時代を想像させる面差しに出会えた瞬間、

まずは、ひと安心。

(想像たくましいオバサンです...)


お元気になられ、本当によかった!

作品創りにとっては悪しき時代ですが、

これからも、素晴らしいお仕事をなさって下さいませ...。


墨で描く場合、

墨汁で描く場合、

それは、時々により異なりますが、

なぜか、

巨匠の下絵には私との阿吽の呼吸があり、

仕上がりは常に満点。 大いなる満足感を与えられています。


焼きものや蒔絵を持ち込んだり、

多くは図録やスケッチなど、

さまざまな形で自分のデザインをお伝えし、形にして戴くのですが、

何をお願いしても、素晴らしい下絵となって却ってくるのです。

(下絵がきちんとしていないことには、どうにもならないのです...)


以前、訪問着を創る際、

意匠のサイズを少し小さくして下さい...とダメ出ししたことがありますが、

こんなことも、一度きり。

京都が誇る、私の大巨匠です。


「いつまでですか...?」

「今は、何よりも、お体優先! 先生のお気が向いて、やりたくなった時で結構です」

「.........」(微笑)

「ほな、そういうことで、よろしくお願い致します...」


階段を降りると、目頭が熱くなって困りましたが、

巨匠の復活は素晴らしきこと。

そして、

二条城まで歩くうちに、

なんだか明るい気分がこみ上げてきたのです。


午前中にお会いした機屋さんの顔、

紬商の番頭さんの顔、

みんな年老いて腰が痛いとか、調子悪いでっせ...とか言いつつ、

嬉し気に近況を話して下さり、

京都のようなところでも、人情は確実に伝わっています...。


苦しくても真面目に生きていれば良いことがあるし、辛いことが続くこともあります。

好きなこととはいえ、

作品創りには、それは様々な苦労がありました...。

嫌らしい形で私を騙し、徐々に大損害を与えた染め屋のお内儀、

あの工場の黒幕は、今頃、どうしているのでしょう...。


思い出すだに呆れてしまうものの、

「あの女は普通ではない...」、そう喝破しはった番頭さんの眼力に、

今朝、お会いした瞬間、敬意を表する私でございました。


「そやから言ったこっちゃないんですわ、ほんまに普通の女やアリマヘンでアレは!」

と、一気にまくし立てる番頭さん。

こういうとこ、10年前と全然、変わっていません。 

しかも、ますます磨きが掛かっているのが可笑しい。


(そうね、ご養子さんの腕はよかったけど、顔からして、強烈な嫁はんやったなぁ...)


私の白生地を、自分のところの茶色くなったB反とすり替えて染めたり、

下絵を返却せずにとぼけたり、

仕事のミスが多く、やり直しの工夫が大変だったり、

そのために工料が倍になったり、

お預けしている白生地をごまかしたり、隠したり...と、

他にもイケズがいっぱいあったねんけど、

あんなえげつないこと、一体、どないな心ですんねん...。



「帯締めかて、殆ど中国で創らせているんですわ。内緒の話やけど...」

「あ、そう...」

(そんなこと、少しも内緒やない。道明さんかてそういう噂なのでございますよ...)


みんなが年を取り、私も年を取り、だからこその会話が流れます。


話好きのオトーサマが多いせいで、

巨匠の寡黙さ、佇まいが、やけにカッコイイ...。



「こんにちは...!」

「いやぁ、えらいお久し振りでんなぁ。せっかく来てくれはったのに、

今日はワシ、顔が腫れてて恥ずかしいんですわ...」

と、弱々しい声で左頬を抑えている社長。


「ヤーね。 社長のお顔、大丈夫ですよ」

「いやいや、いつもならもっと男前なんやけど...」


「まだ、言ってるの...。 私、今、そこのお店でコーヒー戴いているのね。

社長おひとりでなさっていらっしゃるでしょ、よかったら、ご一緒に如何かしら!」


「いゃいや、顔が腫れていて恥ずかしい...」

「うふ、元から腫れていましたよ!」


ややって、店内に入っていらした社長は、相変わらず左頬を抑え、

大袈裟に恥ずかしがっている。

まったくもう、

いつからあっちの人になられたのやら...、

(昨年、引退された男らしき専務が懐かしい...)


だけど、

「いつでも自分とこの工場やと思うて...」 と、

当時、右も左もわからぬ私を励ましてくださったのは社長...。


その時の感謝をお伝えし、

あの時は嬉しかったですわ...、そんなこと言いましたなぁ...、と、短く語り合い、

絞りの打ち合わせに移ったのですが、


で、ちょっと心配になっています。

で、トレペに意匠の大きさを描いてお送りすることに致しましたの。


誰もが老化、誰もが善人...。

私の京都は、今はもう、善人しか目に入らなくなっているの。

自分のことになると、

まったくダメなヤツなので、

邪気のある方、底意地の悪しき方は、お断り...と、なっております。


お断りタイプの方は、

時に、私のことを 『怖い』と、言わはります。

その心は、見透かされているようだから...と。


ふーん、って思っちゃいますな。

勘はよい方だけど、霊感はないのです。


素晴らしきブログを綴っていらっしゃる

人気脚本家の井沢満氏は、霊感があるのだそう。

時々、お疲れになるでしょうね。


あらあら、

気がついてみれば、何だか、冗長。

とりとめなき日記となってしまいました。

腱鞘炎が派手なことになっているというのに、

なのに、

左手入力の脱線、すごいなぁ。


呆れちゃう。



(終)


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