クラスメイト


「それじゃあ、お友達をお誘いしてもいいかしら...?」

「ええ、お好きな方がいらしたら、どうぞよろしくお願い致します...」

「せんせ、なにか、パンフレットのようなものあるかしら...?」

「ワタクシ、この調子でしょ、大々的じゃないの。 ま、適当セールっていう感じね」

「じゃ、クラスメイトにプレゼントしたいと思っていたので、見ていただける?」

「わかりました! 倉庫から出しておきますね」


というわけで、朝のお掃除を済ませると、沈丁花の一部が開花!



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昨日、反物が積まれた様子をご覧になって帰られ、

本日、クラスメイトのための帯をご覧にいらしたマミー。

歌舞伎などの観劇、旅行、人生の相談...等々、長きおつきあいの中で、

太っ腹で磊落なクラスメイトに、私の作品をプレゼントしたい...と、

ずっと思っていて下さったそう...。

午後からは、下町の女が二人、お得意の「人情タイム」でした。


梅うどんをご一緒に...と、言っていたものの、

大好きな「おでん種」を持って来てくださったので、急遽、お献立の変更。

材料別に「いじめ煮」をし、冷蔵庫に寝かせていたおでんを登場させました!

いやん、これが凄く美味しくて好評。

「せんせ、おつゆを呑んじゃってもいいかしら...」

「ああん、一緒にすすりましょうよ」 


牛すじ、美味しい! こんにゃくも大根も! 練り物も!

特にお揚げの中のお餅が美味しくて、暫くはお餅談義でしたが、

梅うどんに行く前に、私たちはお腹が一杯になってしまいました。


魚久さんの粕漬けは、半身を真っ黒に焦がしてしまったけれど、

(マミーから上手な焼き方のご教示で→なるほどナルちゃん...)

ために、急ごしらえの適当オムレツが大ヒット!

(切り落としの豚肉と玉葱をざく切りして卵焼き器でまとめたもの)


食後、クラスメイトの方のお写真を拝見し、

お似合いになりそうな帯を3点ほど選び出しましたが、

自然光、照明で変化する色の違いを確認していただきました...。



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最初に、自然光の中で、

次いで、自然光の入る室内で、

季節による太陽光の違いもありますが、明るい場所では色が飛んで見えます。



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次に、室内の照明の中で、

やや夕日がかった電球色、蛍光色と、照明の質によっても変化します。

だから、きものは楽しい...と思えますし、昼夜で感じが変わってきますから、

帯締めの色も、時間や場所で変化させるセンスを身につけてほしい...と、

思うのです。

本当に、きものや帯というものは...と、色の奥深さに喜びを感じます。

(写真は、紬地のきものをつぶして創った絞りの帯、絞りは勿論国産です)



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ところで、

マミーは江戸っ子らしく、ご自身のものはすぐに決まってしまうのに、

クラスメイトへのプレゼントはなかなか決まりません...。

かくいうワタクシも、こういう場合はとても迷います...。

クラスメイトのお写真を前に、なかなか決まりません...。


おきものをたくさんお持ちなこと、今も買われていること、

このふたつから、最も着こなしが楽しみな、今時にない雰囲気のものを、

お茶をいただいてから、もう一度、見直しましょうよ...と、休憩をお勧めし、


10分後、見直しに入って、即決!

最初に、

「こういうの、いいきものにサラッと締めたら、いい女に見えるわよねぇ...」

と、言い合っていたものに決定するのでしたが、

お世話になったクラスメイトに、帯をプレゼントするマミーの心意気、

10周年だから...、在庫過多だからと、原価を割るワタクシの意気、

意気を大切にする下町の女は、大笑いの脱線でコーフンしあったのです。


幾つもお求め戴いているから...と、

お誘いせずにいたのに、こんな展開となってしまい、何という事でしょう...。

この上は丁寧に仕立てさせ、お送り申し上げます。



その夜、幾つかの帯を前にした仕立て屋さん曰く、

「いやぁ、最近、こういうのありませんよねぇ...」

「うふ...」

「いやぁ、これいいなぁ...」

「それ、いいでしょ。色出し、苦労したのよ。地紋起こしなところと、本金が憎いでしょ」

「いやぁ、色もいいし、もう、こういう生地はないですよねぇ」

「そうね、悪い呉服屋が増えすぎちゃったからダメね」

「いやぁ...」

「本当のことを言ってもいいのよ」(笑)

「いやぁ...」(笑)


美しいものや本物を見ると、途端に「顔」が変わる仕立て屋さん、

「いゃぁ...」のひとつに、五つほどのニュアンスがあって、いつも笑ってしまうのですが、


「いやぁ...」の五段活用、微笑ましき五段活用かと存じます。


きものや帯は、女を美しく見せてくれるものですが、

選び方にその人のライフスタイルがあり、心があり、

洋服と同じように選んでしまうと、大概、失敗します。


また、法外な値段を信じたり、安物にしか目が向かないのも失敗多しです。

そして、着た瞬間、歩き出した瞬間、その人の来し方が表れてしまいます...。

きものは、心で着るもの。

嬉しげなお顔の方、微笑みのある方が、ギヤラリーからは美しく映ります。

虚栄心や見栄で着る方には、

周囲との調和が生まれず、どんなに上等の装いをされても、残念なことに...。


初心者の方は、

素敵な着姿の先輩女性を見つけ出すことが第一だと思います。

また、近頃のきもの雑誌は感心出来ませんので、

古い雑誌から感じのよいスタイルを見つけられるとよいかなぁ...と、感じる次第。

往年の女優さんの着こなしは、専門家がちゃんとしていたのでステキな姿多し。


作品を創る側のワタクシとしては、

常に、人の幸せが嬉しい女性をイメージしております。

天然素材と水を使うきものは、知と心の産物。

だからこそ、着こなしには幅があり、センス次第、お稽古次第、

場数を踏むことで、上品にも下品にも、どうにでもなるのです。


これを着る日は、ステキでいよう...とか、

仕立て上がりをご覧になって、「早く、これが着たい...」と、

そう思っていただけるように...と、今宵、気を引き締めております。


60代後半の、クラスメイト同士の温かい逸話をたくさんお聞きしたせいか、

冷え込む時刻になっても、心がほのぼの、


仕立て屋さんの職業意識を見て、頼もしく感じ、

彼等に仕事を回していかねば技術が淘汰されてしまう...と、

またも姉御な思いに駆られております。

以前の仕立て屋さんは高齢で腕が落ちてしまい、

そこの若い衆は仕事が粗く、

人形町・錦やさんの社長にご紹介していただいたのですが、

彼のように、50代で腕のある職人はいないのです。

もし、この人の仕事にマイナスがあるとしたら、

それは、仕立て上がりの畳まれた帯に色気の足りない点でしょう...。


品格のあるよい仕事をする人ですから、そこには目をつぶっておりますが、

母譲りのこの目が、ホントに困っちゃうの。



(終)




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