ビタミンC

 

昨日でウチの「枯露柿」が終わり、今日からはお頂戴したものに変わります。

いつもいつも美味しいものをお頂戴し、皆様にはなんと御礼を申してよいのやら...。

ありがとうございます。

なるべく写真に撮らせていただき、この場所から御礼の気持を...と思っております。

しかしながら、

写真を撮り忘れて、お客様とバクバク胃袋に納めてしまったり、

コーフンして、すぐにみんなで分けてしまったり、

写真は撮れたものの、

後で、「きゃっ!チップが入っていなかった...!」などと、愕然とすること多しな私。

こんな時、

こんなオバサンにお届け下さった方のお気持に、心から申し訳なく思います。

美味しいものも愛情も、みんな平等に...と、生きて参ったくせに、おっちょこちょいと、

あわてんぼうなせいで、万遍なくできず、本当にごめんなさい。 

 

 

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『明日ね、千疋屋さんに行って、枯露柿の美味しいの、見てきますからね』

『いやいや、先日から色々とお頂戴していますでしょ、もう、お腹いっぱいよ』

『こちらも美味しいの戴いてますよ。千疋屋さんのはね、私もいただきたいの』

『そうお、じゃ、私の分は二つにしてね...。風邪治ったら、遊びにいらしてねっ』

 

『それにしても、声が別人ねぇ』

『青江美奈みたいでしょ』

『ううん、島倉千代子みたいだわ』

『えっ、千代...? 人生色々の? 』

『いいえ、ほら、島倉千代子といったらナントカブルースでしょう』

 

お姉さんは、初ボケの模様。

私たちは、お正月に、亡くなった方を偲びながら、昼食を共にする予定でした。

大風邪を引いたせいで延期していただいたお相手は、女の大先輩80代の方。

 

母共々、長いおつきあいのある方です。

昨秋、三越でストッキングを選んでいる時にこの大先輩からコールがあり、

携帯片手に、急いで彼女に似合いそうな靴下を選ぶと、

三越の目と鼻の先にある彼女の居場所に、走って向かいました...。

(地下鉄の階段は上がれない癖に、急ぐ時は、よく走れる仕様になっているの)

向かった店内は休日で静寂。

そこで妹さんの死を知り、ふたりで抱き合うように思い出話をしました...。

 

母の代から何十年と通っていたお店の娘さんだった方も、最早、80歳を過ぎ、

当時、学生だった私は今月で還暦。

亡くなられた妹さんが、

よく、『私とおんなじ気性だから...』と、ニコッとしてくれたこと、忘れられません。

 

枯露柿は、まず、母にお供えし、涙をこぼしながらいただきました。

 

『お母さまが亡くなられてお寂しいのに、よく頑張られて...、お強いと思うわ...』

静かに話されたお姉さんの言葉の中に、どれほどの寂しさがあったでしょう...。

 

寂しい...と言わない寂しさが切なくて、切なくて、

落とした声のトーンに、柔らかい仕草で耐える様子に、心が寄らずにいられましょうか。

 

『ウチね、色々あったでしょ、6年間はね、毎日、2時頃まで膝小僧を抱いていたのよ』

と、言うと、母のことをたくさん話して下さいました。

 

この日以来、ソウルメイトになった私たちは、

深夜、江戸っ子ならではの会話をするようになりましたが、

今思うと、亡くなったお姉さんには、

何年か前に素敵な琥珀のネックレスを頂戴しています。

後日、

そのネックレスをベージュのノースリーブのワンピースにつけ、お店に行くと、

奥から出ていらして、『いいじゃない!』 と、一言言ってニッコリ。

 

ある日、

イタリア製の素晴らしい逆さミンクの毛皮を持ってこられたことがあります。

『朝美さんのとこ、女の方がたくさんいらっしゃるから、どなたかに着ていただけるかしら』

と、姉妹で遊びにいらして下さり、 

結果的に、

『ちょっと羽織ってみて、 あら、朝美さん、お似合いみたいよ!』 と、

まるで、歌舞伎の段取り芝居みたいな間の良さ。

 

こちらが遠慮しないよう、上手に計らって下さる、本物の江戸っ子姉妹なんです。

 

上のお姉さんは、『ネームが違っていてねぇ...』と、何度もネームを触っていらして、

この様子が何とも可愛らしく、上品。 

豆皿を喜んで下さり、手料理を喜んで下さった時の会話は、

思い出すだに泣けてきますけど、

姉妹がいらっしゃる空気感、物腰は、いつの時も小津安二郎の映画のようでした。

 

残された上のお姉様の空気感は、「最後の日本橋の女」という風情があられます。

お洒落されたときのお姉さんは素敵で、 赤い口紅がとっても上品。

 

風邪が治ったら美味しいご飯を拵え、お迎えに行くことになっています。

いつもいつも、綺麗にしていて下さいませね。

私も頑張ります。

 

それにしても、

亡くなったお姉さんの「間合い」が、いかにビタミン豊富なものであったか、

残されたお姉さんが、少し位いボケても「間のよいこと」 と、思うのであります。

 

東京の女で、テンポの遅すぎる女や間の悪い女は、

何となく低い位置に置かれてしまいますが、間のよい女は、一目おかれるのです。

 

大したことではありませんけど、

お茶を入れ替えるタイミングとか、鮪がある時に「焼き海苔」を温めるタイミングとか、

しなやかでササッとした身のこなしとか、来客を歓迎する気持とか、

本当にちょっとした気遣いに、「間」というものが介在しているのですね。

 

 

老姉妹との思い出、愛情に包まれた後は、

ホットレモネードを追加し、

不足の水分と、フレッシュなビタミンCを補うのでした。

 

荷物は減らしていますけど、

持ち物は形見分けしなくてはならないし、

大したものはありませんけど、

ちゃんとしておかなくちゃいけませんね。 早めに始めたいと思います。

 

午後、打ち合わせに銀座に出かけ、回復期に入ったことを確認。

 

昨年は病気で何も出来なかったでしょ、今年は頑張りたいなぁ。

 

 

 

 

(終)

 

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